勉強研究ことはじめ

調べ方と整理の仕方

大学では、自分が知らない、場合によっては興味すらないことを勉強する必要が出てくることがあります。さらに勉強したことを卒業論文等にまとめあげるには、ただ知識として持っているだけではだめで、自分の中で様々な知識を掛け合わせ、いわば「発酵」させなければなりません。そのためには知識を広く集めるとともに、それらを整理して新しい知見を見つけ出す必要があります。

調べるコツ

「土地勘」を培う

知らないことを論ずることはできませんし、知らないのに斬新なアイデアが出てくるということはほぼあり得ません。本当に全く知らなければ、人に教えてもらうことすらできないものです。そこで、まずはその分野について、大づかみに把握しなければなりません。これを、その分野の「土地勘を培う」と呼びます。具体的には、その分野の歴史的流れ、市場規模や売上高といった主要な数値指標、主要なアクター(人や企業)、主要な出来事を、おぼろげでもいいので知る必要があります。

独学は好ましいことですが、何も予備知識がないと間違った知見にだまされてしまうことがあります。最初はその分野に詳しい教員に相談して標準的な文献を教えてもらうか、官庁が出している白書のような中立的な情報源を当たってみましょう。観客を釣って収益を上げるのが目的のYouTuberやまとめサイトを信用してはいけません。

「三角測量」

調べ物をする上で最も重要なのは、「鵜呑みにしない」ということです。有名な本や論文、権威のある情報源でも間違っていることはあります。怪しげな情報源では、さらに間違いを引く確率が上がります。しかし、最初のうちは自分で情報の真偽を判断することができません。よって、知りたい分野に関して、それなりに定評のある文献なり情報源で、出来れば互いの意見が異なりそうなものを最低3点は読み、自分でバランスを取らなければなりません。3点くらい読めば、そのテーマに関して肯定的、否定的な意見を両方とも知ることが出来、かつどちらが現状有力そうなのかも察することができるでしょう。これを「三角測量」と呼ぶことにします。

範囲を広げる

あるテーマについて一通り調べた後は、調べる範囲を広げる必要があります。

  • 国際比較(他の国と比較する)
  • 経時比較(昔と今を比較する)

などが定番の広げ方です。例えば死刑制度の是非について調べているのなら、日本以外の国ではどうなっているのか?(国際比較)、昔と比べて死刑支持は増えているのか?(経時比較)などが考えられます。

具体的な調べ方

ウェブやWikipediaで調べる

土地勘を培うのに最も手軽に使えるのは、ウェブ検索でヒットしたウェブページ、あるいはWikipediaでしょう。特にWikipediaには記事に加えて参考文献も載っていることが多いので、スタート・ポイントとしては悪くありません。ただし誰でも編集できるため、Wikipediaの情報源としての信頼性は低いとみなされます。さらに、Wikipediaの日本語版は、記事の充実という点で英語版にすら遠く及ばないのが現状です。なお読んだページのアドレスは必ず記録しておきましょう。

データベースで調べる

メディアセンターではいくつかの有料データベースが利用可能です。新聞や雑誌の記事、有価証券報告書に検索をかけることができます。詳しくはメディアセンターのデータベースのページを参照してください。なお、大学内のネットワークからしか接続できない(=家やスマホからは見えない)場合もあるので注意が必要です。ただし、大学外からのリモート接続の手段はあります。リモートアクセスのページを参照してください。

本を探す、本を読む

Google等の検索エンジンでテーマをキーワードに検索し、引っかかった本を片っ端から読んでみるのをお勧めします。あるいはOPAC等を活用し、図書館でテーマに関係しそうな本を探して読んでみましょう。このとき、じっくり隅から隅まで読む必要はありません、その本の書誌情報(本の名前、筆者、出版社、出版年等)は必ず記録しておきましょう。とりあえず最初に一冊、ということであれば、新書を読むことを薦めます。ただし、新書も玉石混淆で、あまり信用できないものもあります。

自分のレベルを超える難解な本を読んでも時間の無駄です。目安として、適当にページを開いて、5つ以上意味の分からない単語があった場合、あきらめるのも一つの手です。その場合はもっと易しいレベルのものを探すことになります。講談社ブルーバックスが、易しさと質の高さの面で一つの基準となるでしょう。

本の最後には参考文献のリストがついている場合があります。また本文中でも他の本が紹介されていることがあります。これらを抜き出して、リスト化しておくとよいでしょう。

論文を読む

新しい分野の場合、そもそも本としてまとまった形で出ていない場合もあります。そのような場合は、専門家向けの学術雑誌に発表された研究論文を探すこととなります。最近ではGoogle ScholarCiNiiなど、論文に絞って検索できるサイトもあります。論文は閲覧に高額な料金がかかるものも多いですが(メディアセンターで雑誌を購読している場合もあるので、読みたい論文がある場合は調べてみること)、無料で閲覧できるものも多く、その場合は検索結果からPDFファイルへのリンクが張られていることもあります。これも、書誌情報を必ず記録しておいてください。

人の話を聞く

ある程度知識が溜まれば、当事者や専門家と意味のある会話をすることが出来ます(何も土地勘がないのに人に話を聞くのはお互い時間の無駄です)。準備ができたら話を聞きに行きましょう。

参考文献リストをつくる

情報を集めるのと並行して、書誌情報をもとに参考文献リストを作っていきましょう。卒論でも使えますし、自分が何を読み、どういう勉強をしたのかが分かるので、後で非常に役に立ちます。ワープロで書いてもよいですし、並べ替えが簡単なので、とりあえずはExcelなどの表計算ソフトで作るとよいでしょう。Zoteroなど、参考文献管理に特化したソフトウェアもあります。なお、卒論を執筆するときには、さらにこのリストを編集して書式を合わせる必要があります。

最低限リストに記載すべき情報は、

  1. タイトル
  2. 著者
  3. (学術雑誌の場合は)巻数、号数
  4. (学術雑誌や共著の場合は)該当ページ
  5. 出版社
  6. 出版年
  7. (ウェブページの場合)ウェブサイトのタイトル、URL、閲覧日(「○年○月○日閲覧」といった具合に) で、可能ならば内容に関するメモもつけておくと良いでしょう。

情報を整理する

記録する

学んだことを整理する前に、とにかく記録することが重要です。思いついたことは何でも書きとめておきましょう。紙のノートに書いても構いませんし、情報カードに書きためていくという方法もあります。最近ではNotionのような専用のウェブサービス/ソフトウェアを使う人も増えています。大学のメールアドレスで登録すれば無料で使えます。

眺める

書いたメモを折に触れて見返すことが重要です。書いた時には思いつかなかったことが分かることもあります。

その他

書いて眺めるが発想法の基本ですが、それ以上の情報整理法についても、すでに膨大な量の工夫があります。

など、興味があれば試してみてください。

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